ホタルイカ。
イカのくせに光る。そもそも、光って何か意味があるのか。光っていると夜中に目立って大きな魚に食われる……などというはめになりそうだ。ということは、自殺志望のあるメンヘルなイカなのであろうか。イカスーサイド。恐ろしい世の中になったものである。
しかし、光ると言っても人間が光るよりはマシである。考えても見たまえ。今日もワーキングプアな深夜労働の帰り道、とぼとぼと人生の絶望感をにじませながら歩いている、あなた。駅前の商店街をすぎると、すぐに住宅街。一気に道が暗くなる。ふと、道ばたの張り紙を見ると「最近、このへんで不審者が出没しています。要注意」などと縁起でもないことが書いてある。
急に身の危険を感じ、早歩きになるあなた。すると、目の前にテカテカ光る軽薄そうなホタルイカ風の人間が……。
ビラビラビラ、ベロベロベロ(イカのうねる効果音)。パーッ!パーッ!(光ってる擬音)
「ギャッ」などという現実では楳図かずおだけしか言わない悲鳴を上げて驚くあなた。股間に生温い失禁のぬくもりを感じながら、全速力で逃げ出そうとするが、なぜか足がもつれて逃げられない。
下を見るとすでにホタルイカ人間の長くいやらしい触手が足に絡み付いていた……。もつれて倒れる。たちまち、襲いかかるホタルイカ人間。痛そうなカラストンビの口が開くのを見て「あっ、キティーちゃんの口に似ている」というのが、あなたの最後の意識だった。
恐ろしい。ホタルイカに食われて死ぬ最後だけは避けたいものだ、と誰もが思うことだろう。ホタルイカは食われるより食う方が良い。
ホタルイカはたまにスーパーで半額になってると酢みそを付けて食う。まあ、うまいと言えばうまいが、特に感激するほどのものではない。